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Column / 2019.06.25

飛び降り自殺―“12階から飛び降り”モカの「悩める女子へ…」Vol.3

「昔から哲学的なことばかりを考えていて、自殺願望はずっとあったんです。死んだらどうなるのかと、興味はありました。いろいろなことを先々考えると面倒くさい。それなら今死んだら、わずらわしいことを全部やらなくてよくなるなどと、極端な結論に至っちゃうんですよね」

そう語るのは、4月に共著『12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと』(モカ・高野真吾/光文社)を上梓したモカさん(33)。インパクトのある題名の本だが、約3年前、モカさんはビルの12階から飛び降りた経験がある。男性として生まれ、性別適合手術を受け、仕事も順調だったモカさんは、どうして自殺をしようとしたのか――?

「私は衝動的な感情が抑えられないタイプです。ホルモン剤を飲み始めるときも、性別適合手術を受けようと決めたときも、思い立ったらすぐに行動してしまう。ビルから飛び降りようと思ったときも、とにかく気持ちのアップダウンが激しかったんです。私はやりたいこともやってきたし、友達も恋人もいたし、お金も稼ぐことができたけれど、そのときは全然幸せだと思えなかった。気持ちが落ちて、世の中に絶望して、何もかもがイヤになってしまった。精神安定剤を12錠飲んで、意識朦朧としながら、助走をつけて、走ってビルの屋上から飛び降りたんです」

そもそも躁うつ病の診断を受け、メンタルのバランスをとるのに必死だったモカさん。他人よりも落ち込んでいたから自殺したのではなく、死のうと思ったら、すぐに死ぬと決意できる衝動性が、彼女を自殺へと導いてしまった。いわば“ゲームをリセットする”感覚だったという。

「飛び降りた下には車があって、ボンネットがクッションの役割になったようです。肺がつぶれたり、全身あざだらけになったり、首やあばらや背骨など全身複雑骨折したりしたけれど、奇跡的に助かってしまいました。もし、脊髄が傷ついていたら、半身不随などになっていたかもしれませんが、落ち方がよかったのかも(笑)。左腕と背中にチタンが入っていて、腕に傷がのこっていますが、後遺症はありません」

モカ

1986年東京都生まれ。経営者、漫画家、元男性のトランスジェンダー。

 

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  • photo

    Kimiko Nakahara

  • text・edit

    Akiko Takada