Interview / 2021.03.03
長濱ねる、おすすめの愛読書を紹介。「読書は生きるヒントになる」
大の読書好きとして知られる長濱ねるちゃんに、本の魅力についてインタビュー。bis読者に読んでほしい愛に溢れたおすすめ作品もご紹介。
覚えておこうって思う言葉を一言一句、携帯にメモしている
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――人生のなかで愛を教えられたとっておきの1冊を選ぶとしたら?
1冊選ぶのは難しいですね。そのときどきで変わるのだとは思いますが、今なら……、ちょっと特殊な読み方かもしれませんが、又吉直樹さんの『火花』でしょうか。これは主人公の先輩芸人、神谷さんの言葉なんですが、ネットで誹謗中傷を書き込む人達に対して、「それがそいつの、その夜、生き延びるための唯一の方法なんやったら、やったらいいと思うねん」と。でも自分は決してそんなに強くはなれないから、と解説を入れていたんですが、ここがすごく心に刺さりましたね。私もそんなに割り切って強くはなれないのですが。記憶を遡ると、私の祖母の好きだった相田みつをさんの『セトモノ』という詩に通じるんです。それは「セトモノとセトモノがぶつかりっこをすると壊れてしまう。でもどちらかが柔らかければ大丈夫」っていう内容なんですが。相手がトゲトゲしていても、自分が柔らかい心で「愛」を持っていたら争いにはならないという、そんな意識を心に留め直した言葉でした。覚えておこうって思う言葉を一言一句、携帯にメモしているんですが、ここも打ち込みましたね。
読書は、違う世界を知る入口になったり、何か自分にしっくりくる生きるヒントになる言葉があったり。そんなふうに楽しんでいる気がします。
私は今、本の魅力を紹介する雑誌『ダ・ヴィンチ』さんでエッセイ連載をさせていただいていまして、自分で文章を書くようになって、いかに作家さん達がすごすぎるのかを改めて実感しました。自分の書きたいことをうまく書けないもどかしさもありますが、書いて削ってを繰り返したりしながら楽しんで書いています。何度も読み返してみるんですが、なぜか私の頭の中で早口で再生されていっちゃうんですよね。どんどん、これでいいのかなのループにはまっていきます(笑)。少しずつでも自分らしさを、そして誰かの心に引っかかる言葉を届けられたらいいなと思っています。
ねるのおすすめ愛読書5冊
『(iアイ)』著/西加奈子(ポプラ社)
アメリカ人の父と日本人の母のもとへ養子としてやってきたシリア人のアイが、残酷な現実の只中で生きることへの意味を探し続ける物語。
『そして、バトンは渡された』著/瀬尾まいこ(文藝春秋)
血の繋がらない親の間をリレーされ、4回も名字が変わった17歳の森宮優子。しかし彼女はいつも愛されていた。身近な人が愛おしくなる、著者会心の感動作。
『おめかしの引力』著/川上未映子(朝日新聞出版)
『朝日新聞』連載のエッセイを書籍化。「おめかし」をめぐる失敗や憧れにまつわる日々を綴った“おめかし満身創痍録”。
『深呼吸の必要』著/長田弘(角川春樹事務所)
人生のなかで深呼吸が必要になったとき、心に響いてくる言葉の数々。散文詩二章三十三篇からなる、長田弘の代表詩集。
『火花』著/又吉直樹(文藝春秋)
お笑いの世界を舞台に、漫才師達のおかしくも切ない日々を描いた物語。笑いとは何か、人間とは何かを描ききった又吉直樹のデビュー小説。
※書籍はすべて編集部私物
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