Column / 2022.02.09
元ラストアイドル長月翠が熱唱! イラスト×超短編小説×音楽の「1PICTURE1STORY」Vol.2
本誌前号から連載がスタートした、イラスト×超短編小説×インスパイアソングで世界観を表現する次世代プロジェクト「1PICTURE1STORY」。第2弾の今回は、秋元康さんプロデュースのラストアイドルを2021年7月に卒業し、現在では舞台などを中心に女優業やグラビアにも挑戦中の「長月翠」が、シンガーとして参戦します!
インスパイアソングに先行して、本誌3月号では起点となるイラストとストーリー『ラブソングを聴きたくなったのは』を掲載しています。青を基調とした空や水中空間の作品を数多く手がけるイラストレーター「眩しい」のイラストをもとに、作家でモデルの「ななせ」が物語を執筆。「生きづらい世の中」をテーマに、恋の芽生えにキュンとする”ファーストラブストーリー”が誕生しました。
1PICTURE1STORYとは?
イラストレーターが描く1枚の作品と、それをもとに綴られたひとつのショートストーリーを掛け合わせて生まれた「原案」をコンテンツ作品とする、新時代の表現プロジェクト。「原案」の世界観からインスピレーションを受けて作られた「インスパイアソング」をイラスト×ストーリーと掛け合わせ、国内外に新しいエンターテインメントを発信。今後は、コミック、Webtoon、ドラマ、アニメーション、朗読劇化など、クロスメディアで作品を展開予定。
ラブソングを聴きたくなったのは
どうして人はラブソングに共感し、恋愛映画を見て涙を流すのだろう。
子供の頃から、僕は恋愛ごとに興味がなかった。だけどそれを正直に言うと、「かっこつけている」だの「つまらない」だの非難され、友達の輪から外されることもあった。
「自分のことすら好きになれないのに、誰かを好きになることなんてできないよ」
僕に唯一共感してくれたのが、幼馴染のチカだった。それは、彼女も複雑な家庭環境から転校を繰り返し、同じように孤独を抱えていたからだろう。僕は兄のように彼女を守り、チカは妹のように僕を慕った。
数年経っても僕らの関係は変わらず、定期的に顔を合わせている。今日はチカのバイト上がりに、港の公園で待ち合わせをしていた。最近はお互い忙しく、会うのは3ヵ月ぶりになる。
人見知りで気の弱いチカが、ちゃんと働けているのだろうか。少し早く出てバイト先のカフェをのぞくと、そこには今まで見たことのない彼女がいた。注文も配膳もソツなくこなす姿に、今まで守ってきた“か弱い少女”の面影はどこにもない。
その時、チカが何かにつまずいた。僕が駆け寄るより早く、バイト仲間の男が彼女の体を支えた。先ほどまでとはうって変わり、照れたような笑顔を浮かべるチカ。そんなやわらかい表情を、僕以外にも見せるようになったのか。声をかけることもできず、僕は早足にその場を離れた。
「ごめん、お待たせ」
待ち合わせ場所に現れたチカの手には、缶コーヒーが握られていた。僕の視線に気づくと、「さっきバイト先でもらったの」と照れたように笑う。以前はココアばかり飲んでいたのに、少し会わないうちに、コーヒーも飲めるようになったんだな。
「バイト、しっかりできていたじゃないか。驚いたよ」
「全然そんなことないよ。失敗ばかりだし……でも、みんな優しいんだ」
バイトのこと、大学のこと、新しい友人のこと。楽しそうに話しながら缶コーヒーを飲む横顔は別人のように大人びていて、僕はハッと息をのんだ。
きっともう、彼女の世界にいるのは僕だけではないのだ。いつまでも守らなければいけないと思っていたのに、気づかないうちに、チカは“一人の女性”になっていた。
胸の奥がちくりと痛んだ。彼女の成長を兄として喜ぶべきなのに、心にぽっかり穴が開いたみたいだ。
——ああ、そうか。
僕は、陽が落ちていく水平線をぼんやりと眺めた。彼女が僕を必要としていたのではなく、僕が彼女を必要としていたんだ。失いそうになって、ようやく気づいた。ずっと寄り添ってくれたチカは、いつの間にか僕にとって、かけがえのない存在になっていた。
ふいに、チカがラブソングを口ずさみ始めた。この歌声を、いつまでもそばで聴いていたい。瞳が潤んでいくのを感じて、僕はそっと目を閉じた。
イラスト/眩しい
2019年より、イラストレーターとして活動を開始。「夏旅列車」シリーズ作品をはじめ、青色を用いて、水中空間や空などを描く。MVイラストやジャケット画を中心にイラストを制作。デジタルイラストのオンライン講座も公開している。
Twitter:@MABUSHI__
ストーリー/ななせ
愛知県出身。京都大学文学部卒業後、「七瀬あきら」名義で小説やシナリオなどを執筆するかたわら、関西でモデルとしても活躍。現在、京都観光・小説サイト「夢と知りせば」にて、京都のさまざまな場所を舞台にした物語を連載中
Instagram:@lilyrose0330
インスパイアソング『Blend (feat. 一二三 / 長月翠)』が2月9日(水)から配信中
1PICTURE1STORYの第2弾作品『ラブソングを聴きたくなったのは』をもとに、ギターロック×和楽器にて”清楚ロック”というジャンルを確立したボカロP「一二三」が楽曲を制作。シンガーを担当する長月翠は、高い歌唱力が評価を受けています。幼い頃から支え合ってきた男女2人の恋物語から生まれた疾走感あるラブソング『Blend (feat. 一二三 / 長月翠)」は、2月9日(水)よりiTunes、Apple Music、Amazon Music、Spotify、LINE MUSICなど、主要音楽配信サービスにて配信中!
・配信開始/2022年2月9日(水)→iTunes、Apple Music、Amazon Music、Spotify、LINE MUSICを含む主要音楽配信サービス
楽曲制作/一二三
ニコニコ動画・YouTubeを中心に、ボーカロイド楽曲の投稿活動をおこなう。おもに和楽器を用いたギターロックを制作。チョコレートが大好物。
Twitter:@Hihumi_v
YouTube:一二三
TikTok:@hihumi_v
シンガー/長月翠
オーディション番組「ラストアイドル」のメンバーとして2017年12月デビュー。2019年1月に 『がっこうぐらし!』にて映画初出演・初主演を果たす。2020年5月にはファースト写真集を発売し、初登場1位を獲得するなど話題に。2021年7月、約4年間の活動を経て「ラストアイドル」を卒業。現在は女優として多数の舞台に出演するほか、グラビアでも各誌の表紙や巻頭を飾るなど、活躍の場を広げている。
Twitter:@midori_staff
Instagram:@miffy00517
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第1弾作品の朗読コンテンツが公開スタート!
コチラの記事で公開中の第1弾作品「すべての絶望は、夜に吸い込まれていく。」が、”Voice Recitation Movie”として「1PICTURE1STORY」の公式YouTubeチャンネルにて、第2弾楽曲のMVとともに2月16日(水)に公開! 朗読は、『たまこまーけっと』の北白川たまこ役など、数多くの作品に参加している人気声優の「洲崎綾(すざきあや)」が担当します。
朗読/洲崎綾
アイムエンタープライズ所属。初主演となった作品は、2013年に放送のテレビアニメ『たまこまーけっと』の北白川たまこ役。また、映画主題歌『プリンシプル』の歌唱を担当し、シングルも発売している。 2015年には、 第9回声優アワード新人女優賞を受賞する。 同年11月公開のアニメ映画『RWBY Volume1」にてノーラ・ヴァルキリー役を担当し、吹き替えに初挑戦をしている。
Twitter:@suzaki_aya