Column / 2018.08.18
感動的なラストに涙。素敵なことを教えてくれる『あなたを選んでくれるもの』
文筆、映画、音楽、美術など、多方面にわたる活動で知られるアーティスト、ミランダ・ジュライ(1974~)が、フリーペーパーに売買広告を出す人々を訪ねたフォト・インタビュー集『あなたを選んでくれるもの』。
ユニークな人々とのめぐり逢いをまとめた一冊ですが、少し視点を変えてみると、ありふれた日常に隠された興味深い物語に出合えることを教えてくれます。SNSとの距離感を見直したい、と思っていたら何かのきっかけになるかもしれません。
密やかで、刺激的なノンフィクションのかたち
映画『ザ・フューチャー』の脚本執筆に行き詰まっていた著者が、現実逃避的に眺めていた個人広告に、ちょっとした好奇心を持ったことがきっかけで始まったこのプロジェクト。普通の生活者でありながら、どこか奇妙な人々との出会いが、いつしか脚本のメインテーマに重要な影響を与えていきます。
映画撮影時のエピソードを綴った最終章はとても感動的。普段の生活では会うことがなかった隣人とも、自分が少し能動的になるだけで、思いもよらない共通点が見つかったり、時には一生忘れられない時間を共にすることも。そんな素敵なことを教えてくれる一冊です。
ミランダはこの作品以降、インタラクティブアートのような発想から生まれたスマートフォンアプリ『Somebody』や、小説『The First Bad Man』を発表。また、新作映画の製作もアナウンスされています。
『あなたを選んでくれるもの』
著/ミランダ・ジュライ 訳/岸本佐知子
2015年/新潮社 ¥2,300(新潮社)
関連本もCheck!
Miranda July, Harrell Fletcher
『Learning To Love You More』
2007年/Prestel(Amazonで見つけられることも。)
ミランダとアーティストのハレルによる参加型アートプロジェクトを書籍化。二人のお題に沿った作品を公募。本書にまとめられた応募作品は、どれもユニークで親近感の湧くものばかり。ウェブサイトも是非チェックを!
Bill Shapiro
『Other People’s Love Letters』
2007年/Potter Style(Amazonで見つけられることも。)
『LIFE』誌の元編集者が収集したラブレターをまとめたビジュアルブック。普段の生活では知り得ない他人宛のラブレターに込められた想い。筆跡を通して伝わってくる生々しい感情に、共感したり、くすっと笑えたりもする一冊です。
Selected by Tomo Hatori
’90年代より都内某所の写真集専門店勤務。現在は世界中のアンダーグラウンドな美術作家を紹介するレーベル「KODANUKI PRESS」の企画、制作を担当。6月に新作カセットテープ「Germination」をリリース予定。
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photo
Tomoya Nagatani(will creative)
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model
Ayana Shibata
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hair & makeup
Hiromi Kawahara
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other
Tomo Hatori
Sakiko Fukuhara
Kumi Matsuno