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Interview

Interview / 2025.12.25

timelesz佐藤勝利が語る、ものづくりの原点「それでいい」より「それがいい」

永遠がそっと触れたような静けさのなかで、佐藤勝利さんが描き出す美学。連載「bis homme」でともにした約5年の季節が、柔らかな光に呼応するように浮かび上がる。連載ラストとなる今回は、Evermoreをテーマに、色褪せない価値観と永遠に残したい景色について語ってもらった。

昔からずっと変わらずに大切にしてきた言葉

今号のテーマは「Evormore(エバーモア)」。“いつまでも”“永遠に”という意味の言葉にちなんで、昔からずっと変わらずに大切にしてきた言葉についてお話ししたいと思います。

小さいころから、ものづくりが好きでした。手先もわりと器用なほうで、小学校のときは図工の時間を楽しみにしていたくらいです。そんななかで、当時の先生に言われたひと言が、時間が経った今でも色褪せずに心に残っています。それは「“それでいい”じゃなくて、“それがいい”っていうものを作ろうね」という言葉。きっと先生にとっては、子ども達へのなにげない声かけだったと思うんです。でも、その言葉を聞いたとき、小学生の僕は“どういうことなんだろう”と頭のどこかに引っかかっていました。でも、今思うと、あの言葉はものづくりの本質を突いた、核心のような言葉だったんですよね。日本語の面白さでもありますが、「それ」に続く言葉が「で」と「が」では、意味がこんなにも変わるんだという気づきもありました。

この言葉をきっかけに、“自分が心からいいと思えるもの”を最後まで貫く意識が芽生えた気がします。どんなものづくりでも、妥協せずにこだわり抜くこと、譲れない部分を持ちながら丁寧に向き合うこと。その姿勢は、今の仕事にもつながっています。ステージづくり、作品づくり、役づくり……どんな仕事であっても、自分が主体となって動く場面ならなおさら、その姿勢を大事にしなくてはいけないと思います。どんな形であれ、自分のなかで「それがいい」と思えるものを形にしていくこと。その精神が、今の自分を支えるひとつの軸にもなっています。

怖さよりもあたたかさのほうが勝っていた

12月末には、timeleszとして初めてのドーム公演があります。そんな今、改めて思い出すのは、初めてグループで東京ドームに立った日のことです。あのときに見た景色は、今でも心のなかに鮮明に残っています。あの場所に立てるようになるまでには、長い時間がかかりました。客席から、先輩方や同世代のグループがステージに立つ姿を見ては、「次は自分達の番だ」と信じて、その日をずっと待ち望んでいました。そんな憧れのステージに、自分達が立っている。その瞬間の感慨は、言葉では言い表せないほどでした。実際にステージに立ったとき、強く感じたのは“守られているような感覚”です。5万人以上のファンの方々がいて、その全員が自分達を見ている。その状況を想像したときは、とてつもない緊張に襲われるだろうと思っていました。でも、いざその瞬間を迎えると、不思議と怖さよりもあたたかさのほうが勝っていて。ファンのみなさんが作ってくれた優しい空気に包み込まれるようで、そっと迎えられている気もしました。そのとき感じたあたたかさは、この先もずっと忘れることはないと思います。そして今回、初めてドームのステージに立つメンバーが5人います。彼らがどんな景色を見て、何を感じるのか。その瞬間を一緒に迎えられることが、今はとても楽しみです。

今日の撮影も「永遠に残したいもの」というテーマのもと、絵画のような世界観で行いました。イラストの布やドレープカーテンを背景にしたり、額縁を使ったりと、アート感のあるセットがとても印象的でした。イスにつけられたリボンはスタッフさんの手づくりだそうで、そうした手づくりの小道具が登場するのも、まさにbisらしいなと思いました。柔らかな光が差し込むような構図もきれいで素敵でした。ちなみに、絵画はもともと好きで、時間があると美術館に足を運ぶこともあります。特に海外に行ったときには、できるだけ立ち寄るようにしています。

Interview_Yuri Tokoro