Interview / 2025.09.14
宮舘涼太(Snow Man)、水上恒司、初共演の裏側「嫌な奴感を出すことは常に意識していました」
映画『火喰鳥を、喰う』で初共演を果たした、宮舘涼太(Snow Man)さんと水上恒司さんがbisに初登場! まっすぐな眼差しで、役と真摯に向き合うふたりの、静かな共鳴とささやかな野心。その奥に宿る、熱を帯びた想いに触れて。
宮舘涼太(Snow Man)さん、水上恒司さんにインタビュー
おふたりが共演された映画『火喰鳥を、喰う』では、不可解な現象の数々とさまざまな展開が繰り広げられますが、役柄について教えてください
水上 僕が演じる久喜雄司は、この映画のなかでは極めて普通の人物で、お客さん視点として存在しているんだと思います。舘さん演じる超常現象専門家の北斗総一郎の何を信じていいのか、一緒に暮らしている妻の夕里子(山下美月)のどういったところを救ってあげたらいいのか、というのを映画を見ている人達と同じ思いでいられるような立ち位置でいないといけないなと思いました。なので、単純なリアクションでは面白くないので、一役者として、キャラクターの設定として、徐々に北斗のことを信じざるを得なくなっていく雄司の気持ちのグラデーションをちゃんと表現することを大事にしました。
宮舘 北斗総一郎はとにかく謎めいた男です(笑)。自分の思い入れのあるもの、手に入れたいものへの思いが強すぎるんです。その思いによってあるタイミングで物語が展開することになったりするんですが、もう登場から浮いているんですよね(笑)。東京からやってきた謎めいた男で、服装もそうだし、名刺の渡し方しかり、喋り方や眉毛の動かし方までイラッとする男、ということを意識して演じました。周りをイラッとさせたら勝ちだなって感じで。
雄司と北斗は夕里子を巡ってある種ライバル関係になりますが、関係性について大事にしたことはありますか?
宮舘 僕は雄司にボールを投げる立場でやらせてもらったので、まずはテストの段階で本気でぶつかってみました。そこから生まれていくものがたぶんお互いにあったと思います。お芝居の確認をさせていただきながら、この間合いで用意したものの受け取り方はどう出てくるのかなど。そこであえて本番は変えていったりもあったかな、と思います。話し合いみたいなものはなかったんですが、やはり北斗は嫌われてこそ勝ちだと感じていたので喋り方のチョイスで「何だこいつは」って思われたいなということを意識しました。でももう一方では北斗のことを信じてもらわなきゃいけない、存在を納得してもらわないといけないのでテンションをあげていきましたね。夕里子に対する気持ちもちょっと恐ろしかったりして、ある場面から徐々にテンションをあげていって、そこからクライマックスまで持っていかないとだな、と思いながら演じていました。ある種、この物語を象徴する役だと思いますが、演じるのは難しかったです。嫌な奴感を出すことは常に意識していました。
水上 最近撮影した作品でお会いしたベテランの方が、「役者はその人の素が出るんだよ。素がどれだけ豊かで面白いものになるか、そこに投資していかないといけない」って話をされていて僕もそうだよな、って痛感しました。そういった意味で舘さんの持っている普通ではない個性的な面白さっていうものを北斗に反映させていただきたいと思ったし、僕も共演者として引っ張り出せるようなアプローチの仕方をしたかったです。結果的にその歯の白さは長野にはいないだろう、って思ったし(笑)。
宮舘 いやいや東京から来ている男だからね(笑)。ホワイトニングしているかもしれないし。
水上 でも何もかも僕が用意しなくても引っ張らなくても舘さんの中で北斗のいろいろ普通じゃないものが揃っていたのでとても面白かったです。
宮舘 面白かったのね(笑)。それはよかったです。水上くんはすごい役者さんだと思います。今までもいろんな役を演じてきていますし、現場でも堂々としていました。スタッフさんや周りを巻き込んで主演としてどっしりと構えていたし、いろんな方とコミュニケーションを取っていくなかで、雄司というキャラクターを生み出していったような感じがしました。どこまで気持ちの配慮ができる人なのだろう、って思うぐらい周りの人達全員に配慮を持って接していたんです。基本的に硬派で、硬派の中にピュアさもあり、ときにはちょっとおどけてみたりして、いろんな顔を持っているので、もっともっと知りたいなと思わされるし、引き出しがたくさんありそうだなと思わされる人ですね。僕が言うのもおこがましいんですけど、今後の作品も楽しみです。どんな役と出会ってどんな変化をしていくのかがすごく気になります。
会う前のイメージと変化はありましたか?
水上 僕は基本、会う前のイメージよりも、大事なのは目の前で見た舘さん。それが僕の中でいちばん信じられる姿なので、会う前はどんな人かはどうでもいいぐらいなんです。この作品にともにキャスティングされた、ということが運命ですが、本当に真摯に役に向き合っている方でした。北斗の役は誰が演じても難しい役。どんな経験や場数を踏んでいたとしても難しい。でもそこを逃げることなく、毎回、毎シーン、毎セリフ油断をせずに挑んでいる舘さんの姿はこれまでの作品、アーティストとして活動する中での取り組み方に通じるものがあると思いますし、そんな方とご一緒できてとっても頼もしかったです。僕にとって全部ぶつかっていける人だなって思いました。
宮舘 僕は共演するにあたってちょっと調べさせてもらったんです。水上くんのインスタグラムを見ていたら、海外で腕立て伏せをしているところを自撮りしている動画が出てきて、これはもしかしたらヤバい人なのかな、と(笑)。
水上 ヤバいって思いましたか(笑)。宮舘 思っちゃいましたね(笑)。結構ストイックなんだなと。役者さんって忍耐も必要だしその役を追求することもあってストイックなんだろうな、って思いながら現場に向かったら本当にストイックな方でした。そしていい意味で硬い。自分の意思がはっきりしていて、僕が調べて想像したとおりイメージのまんまの人でした。なのでホッとしたと思った途端、急におちゃらけたりするんですよ。急にチャーミングな部分を見せるから、何この人、いろんな顔を持ってそうだなって思いましたね。
映画『火喰鳥を、喰う』撮影の裏話
撮影現場ではどんな話をされたんですか?
水上 たわいもない話でしたよね。
宮舘 合間に鰻を食べに行きましたね。
水上 僕がご馳走しましたけど。
宮舘 そうなんです。奢ってくれたんです。この話はそこまでがセットだもんね(笑)。
水上 僕より先輩でSnow Manの宮舘涼太のほうが稼いでいるのになーって思いながらでしたから(笑)。
すごく仲がよくなったんですね
水上 前の取材のときも「仲がいいんですね」って言われましたけどどうなんですかね、舘さん的にはどうですか?
宮舘 いいんじゃないですか。
水上 僕はわりと「この人はいじって大丈夫」ってちゃんとわからないと事故ったりするから慎重にいきますけど。
宮舘 そうだね、事故ることあるよね。
水上 だからこそ、そこをチェックしたうえで舘さんをいじってます。いじって大丈夫な人だ、と思って。
宮舘 僕もいじられにいってるからね(笑)。
水上 ハハハハハ。
宮舘 同じ作品でご一緒させていただいているからいい関係性築きたいですよね。取材現場でもポップに話せたほうが宣伝になるし。そういうお仕事の感じもありつつ、プライベートな部分ももっと知りたいなって思わせる水上くんでよかったな、って思うし。
水上 まあ、その思いも一方通行ってことで。
宮舘 そうやってひとりで先を歩いているように見せて、実は僕のほうが先を歩いているんだけどね(笑)。
映画では「ヒクイドリ、ビミナリ」というフレーズが出てきますが、最近美味だと思ったものはなんでしょうか?
水上 最近、ヴィシソワーズを自分で作ったんですが、美味でしたね。上京したてのときに住んでいた街、駒沢公園の近くのバワリーキッチンというお店のヴィシソワーズがすごく美味しくて自分で再現してみたら意外と美味しくできたんです。じゃがいもと玉ねぎの冷製スープに生の明太子を入れたものなんですが、最近、明太子を送ってもらって、もったいないから作ってみよう、と思って作りました。
宮舘 忙しいのに自炊しているんだね。
水上 確かに忙しいときはあるんですけど、時間は割とあったりするし、自炊する時間が自分には大事な時間なので、できるときはなるべくやるようにしています。健康面でも経済面でも大切だし、料理をすることによって自分が浄化されるような気もしていますね。スープは煮込むだけだし、冷やしている間に風呂に入ったりすればいいので合理的にできます。
宮舘 僕は撮影場所の長野でお世話になったお店の親子丼。メニューにはないまかない食だったんだけど、非常に美味しくて癒されました。
水上 確かに美味しかった!
映画が展開するにつれて執着というキーポイントが出てきますが、ご自身が執着してしまうことはなんですか?
水上 執着することはあるんですけど、今はそんな欲深い自分を俯瞰しているというか観察しつつ、そうじゃない違う方法があるんじゃないか、と考えたりしています。自分の欲求に素直だったころからすると多少生き苦しかったりはするんですが、正解のない世の中だからこそ、周りの意見だったり違う考え方を取り入れよう、という時期だったりするんですよね。
宮舘 いろいろ考えている時期なんだね。僕は洋服を買うことかな。ネットショッピングっていうものができなくて、実際に見て試着をして、いいなと思ってからでないと買えないんです。僕の掟的なものですね。
宮舘涼太(Snow Man)
2020年、Snow Manとして『D.D./Imitation Rain』でCDデビュー。5年間で人気を徐々に獲得し、今年スタジアムライブを大成功に収めた。個人としても“舘様”の愛称で親しまれ、気品ある佇まいや独特の存在感で唯一無二の個性を発揮。TBS系料理バラエティ番組『黄金のワンスプーン!』での姿も話題となり、「エレガント☆」というフレーズは、彼のキャラクターを語るうえで欠かせないキーワードのひとつとなっている。
水上恒司
2018年、ドラマ『中学聖日記』(TBS系)で俳優デビュー、瞬く間に注目の存在になる。映画『死刑にいたる病』、NHK連続テレビ小説『ブギウギ』、ドラマ『ブルーモーメント』(フジテレビ系)など、さまざまな役柄を演じ、’24年、映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』で第47回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。今や日本の映画界に欠かせない俳優のひとり。
Information
映画『火喰鳥を、喰う』
横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作の実写化。久喜雄司(水上恒司)の元へかつて戦死したはずの祖父の兄・貞市が書いたという謎の日記が届き、その日から不思議な現象が雄司と妻・夕里子(山下美月)に降りかかってくる。そこへ超常現象専門家の北斗総一郎(宮舘涼太)という謎の男が現れ、さらに難解な展開を迎える。
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