Interview / 2025.06.17
アンジュルムを卒業する上國料萌衣からのメッセージ「“好き”を信じて、極めてください」
2019年よりレギュラーモデルとして本誌を彩ってきた、アンジュルムのかみこ、こと上國料萌衣さん。グループとともにbisも卒業する彼女にインタビュー。今の気持ちとこれからの計画などについて聞きました。
bisで着るお洋服は“自分を強くしてくれる”存在
ヴィンテージのジャケット¥49,500/ヴィニヴィニ ドレス¥96,000 /シュシュ/トング(エッセンス) ヴィンテージのブラウス¥26,400/キュリオズ チュールのハット¥22,000 /スグリ
アンジュルム卒業前のbisラストシューティング。印象に残ったスタイルはありましたか?
どれも可愛かったのですが、なかでも黒のマニッシュなスタイルがすごく好きでした。大きなリボンが印象的で、個性的なのに黒で落ち着いた雰囲気もあって。派手すぎず、でもちゃんと個性が出ている感じが自分の好みにぴったりです。ヴィンテージのブラウスがちらっと見えるところも可愛くて、とても気に入っています。それから、真似はできないけれど、水色のドレスも好きでした。ソフトな可愛さだけでも素敵なのに、そこにハードな要素が加わることで、より印象に残るスタイルになっていました。
企画テーマでもあるヴィンテージには、もともと興味がありましたか?
私は流行にはあまりこだわらず、自分の好みに合う個性的な服を見つけるのが好きなんですが、ヴィンテージには派手な色のアイテムが多いし、人と被らないものを探すのが楽しいので、古着屋さんに行くこともあります。モデルの仕事を始めてから、そうした個性的な服の面白さに目覚めたというか。普段だったら挑戦しないようなスタイルをお仕事で着てみて、「意外と似合うかも」と思えることがあったり、メイクでも「この組み合わせ可愛いな」とか、「ラメってこんなに映えるんだ」といった発見があったり。そうやって、少しずつファッションやメイクを学んでいった感じです。
bisのレギュラーモデルとして、特に印象に残っているエピソードはありますか?
初めての撮影のことも鮮明に覚えていますが、やっぱりいちばん心に残っているのは、2021年5月号で初めて表紙をやらせていただいたときのことです。お話をいただいたときは、「まさか自分が?」と驚きましたし、すごく緊張したのを覚えています。衣装を身につけたり、メイクをしていく中で自然とbisの世界観に入り込んでいき、たとえカメラの前で自信が持てなかったとしても「絶対に可愛くなれる」という安心感がありました。私にとってbisで着るお洋服は“自分を強くしてくれる”存在です。レギュラーの撮影でも表紙の撮影でも、気持ちに差をつけることはなく、毎回手探りではありましたが、“bisらしさ”をちゃんと意識しながら臨んできたつもりです。
bisでの活動を通して、得たものはありますか?
ガーリーなものや個性的なものが好きになったのは、唯一無二の世界観を持つbisのおかげだと思っています。そして、“抜け感”や“アンニュイな表情”も、bisの撮影を通して学んだことです。アイドルのときはいつも笑顔をキープすることが多くて、その表情に慣れていたのですが、bisの撮影ではカメラマンさんとのコミュニケーションの中で「こういう表情が求められているんだ」って、少しずつ覚えていきました。今改めて当時のbisのページを見返してみると、大人になりきれていない自分がいて、それがピュアで、すごく可愛いなって。私の思うbisのスタイルは“少女と大人の中間的な存在”。だからこそ「大人っぽくなったね」って言われたとき、「あのころの表情は、今はもう出せないかもしれないな」と感じることもありました。
撮影を通じて、表現することへの意識に変化はありましたか?
モデルとしての表現は、アイドルのときの表現とはまったく違うなと感じました。アイドルは音や動きがあって、立体的な時間の中で魅せていくものだけど、モデルは一瞬を切り取る仕事。その一瞬に気持ちを込めるには、カメラマンさんとの信頼関係がすごく大事でした。モデルの経験がアイドルの活動に活かされたこともありますし、逆にアイドルとして成長したことで、モデルとしての表現の幅も広がっていった気がします。
この仕事が天職だと思っている
ドレス¥120,000/スコシフシギ(ナインフォックス ショールーム) ヴィンテージのピアス¥8,000/バラックルーム
アンジュルム卒業についてもお伺いしたいのですが、きっかけのようなものはあったのでしょうか?
これといった出来事があったわけではなくて、少しずつ「将来はこういうことをやってみたい」という思いが積み重なっていった感じでした。当時のリーダーだった竹内朱莉さんが卒業を決めたときに、「そろそろ自分の番だな」って。そのころにはすでに卒業の話もしていましたし、次のリーダーになることについては、正直に言えばすごく迷いました(笑)。でも、自分が、という状況になって、やるからには真剣にやろうと覚悟を決めて。ちょうどその時期は、佐々木莉佳子さんと川村文乃さんがいて、3人でリーダー的な役割を分担していたので、完全にひとりで背負うという感覚ではなかったんです。だから、最初のころは精神的にも少し楽だったと思います。
リーダーとなり、どのような形でグループを支えていたのでしょうか?
竹内朱莉さんが卒業して迎えた最初のツアー初日、3人で肩を組んで「おつかれさま!」って声をかけ合ったことを、今でもよく覚えています。その後、ふたりが卒業し、自分がリーダーとして本格的に動いていく中で、「変えられることは変えていこう」と思うようになりました。メンバーとしっかり話す時間を作ったり、メンバーから出た意見を会社の方に伝えたり。通るかどうかは別として「まずは言ってみよう」というスタンスで動いて。グループをもっとよくしたいという気持ちが強かったからこそ、リーダーになったことでむしろ自由に動ける機会が増え、「やりたいように行動していいんだ」と気づいたんです。「こういう楽曲をやってみたい」「ラップパートを歌いたい」「ソロ多めの曲が欲しい」「衣装のテイストをこうしたい」など、さまざまなことを提案し、ライブ演出やセットリストについても「こういう流れでやってみたい」と自分からアイデアを出すようになりました。もともと、やりたいことはたくさんあったけれど、以前は言っていいのかわからなかったのですが、リーダーになったことで「言ってもいいんだ」と気づき、後輩にもそういう空気を伝えていきたいと思うようになりました。
後輩達に託したいことはありますか?
9年間で得た技術や経験は、できる限り全部伝えるようにしています。ただ、それらの経験って、いろんなことを乗り越えたからこそ得られたものなので、今すぐに真意が伝わるとは限らない。でも、みんなが成長したときに、「あ、あのとき言っていたことだ」と感じる瞬間がきっとあると思うんです。それ以外のことについては「こうあってほしい」という理想を押しつけたくなくて。ひとつだけ、「仲よしであってほしい」という気持ちは伝えていますが、卒業後のアンジュルムは、これからのメンバーが自由に作っていくもの。私も先輩達から「あなた達のアンジュルムを作ってね」と言われてきました。それが時代の色になっていくし、変化がないと、メンバーが入れ替わる意味もない。たとえ迷ったり、もがいたりすることがあっても、それはきっと「必要だったんだ」と思える日が来るはずです。
卒業に向けて、どんな気持ちで日々を過ごしていますか?
正直、次のことはまだ考えないようにしています。留学のために英会話教室に通っていたけれど、今はアンジュルムの活動が最優先。今しかないこの時間を、ちゃんと大切に過ごしたいと思っています。卒業された先輩達がよく「またライブしたい!」って言うんです。アンジュルムのライブって、汗だくになって苦しくなるくらいにハードで。でも、その先にある高揚感とか、あの独特の感覚って、卒業したらきっと一生味わえなくなる。だからこそ「残りのツアー、ひとつひとつを本気でやろう」と決めました。卒業を発表するまでは「寂しさは乗り越えたな」って思っていたんです。佐々木莉佳子さんや川村文乃さんが卒業したときはずっと寂しくて。だから自分も、後輩にたくさんのことを伝えなきゃと動いていたし、自分の番が来たときには「もう、あとは楽しむだけだな」って思っていたんですけど、ツアーが始まって、ある振付の中で、自分がしゃがんでほかのメンバーが歌っているのを見上げる瞬間があるんですが、そのとき、加入当時のひとりひとりの姿がふっと浮かんできて……毎回思い出しちゃって……(涙)。ごめんなさい泣けてきちゃう(笑)。みんなが成長していく姿を見られたこと、それが本当にありがたいと感じています。アンジュルムは、卒業と加入を繰り返していくグループ。だから、メンバーの加入があるたびにグループを一から作り直すような感覚があるんです。でも、この2年間は新メンバーが入らず、ただただ“成長だけ”を重ねてきた期間でした。だからこそ、この完成された状態で卒業できるのが、本当にうれしくて。みんなが頼もしいなと、心から思えた瞬間でした。
留学を決めた理由は?
アンジュルムとして活動していく中で、いろいろな世界を知りたくなったというのが、いちばんの理由だと思います。もともとひとり旅が好きだったので、最初は「バックパッカーになりたい」くらいの、軽い気持ちで考えていました(笑)。旅先で出会う人や、日常の中で一瞬だけ行き交うような人達と話しをするのがすごく好きなんです。その人が考える“人生のあり方”を聞くことに、とても惹かれるというか。だから、いろんな場所に行って、いろんな人とコミュニケーションをとってみたい。そのために、まずは「語学を学ぶこと」から始めようと思って留学を決めました。準備のため英会話教室に通っていたころに、オンラインお話会で海外のファンと話す機会が増えて、「英語でちゃんと伝えられたら、もっと楽しいだろうな」って思ったんです。英語って、ストレートな表現が多いし、英語歌詞の理解にもつながる。ネイティブの人がどう感じているのか、もっと知りたくなりました。今のところは具体的な期間は未定なのですが、まずは1年くらいかな、とは思っています。きっと行った先で、「日本のよさ」にも改めて気づける気がしています。
その先の未来については、どう考えていますか?
将来については、正直まだ具体的なことは決まっていません。でも、歌うことが好きだし、この仕事が天職だと思っているので、やめるつもりはありません。活動を続けながら、海外にも自分をアピールできるようになれたらいいなと思っています。できることが増えるだけだなって、今はそう前向きに考えています。
最後に、bis読者の皆さんへメッセージをお願いします。
自分の「好き」を信じて、極めてください。似合う・似合わないではなく、「好きなものを纏っている自分」を信じてほしい。絶対に、それがいちばん輝いていると思います。bisのレギュラーモデルとして活動してきた私を通じて、「こういうファッションが好きになった」「このテイストを真似するようになった」と言ってもらえたのが、本当にうれしかったです。これからも、そんなふうに“好き”を楽しんでくれる人が増えたらいいなって思っています。
Photography_Nico Perez Styling_Ruri Matsui Hair & Makeup_ Aya Murakami Text & Edit_Midori Yoshino