Interview / 2025.04.10
森香澄が語る独立のきっかけ「人生一度きりだからもっといろいろなことに挑戦してみようかな」
ゲストの人間性に迫るコーナー、カフェ・ド・人間性。聞き手・水野しずが、ドラマや、バラエティなどでもとにかく引っ張りだこな、フリーアナウンサーの森香澄さんにインタビュー。
水野しずが森香澄に聞く!
ゲスト:森 香澄
2019年にテレビ東京に入社。アナウンス部に配属され、スポーツ番組やバラエティ番組を担当。2023年に退社し、フリーアナウンサーに。
聞き手:水野しず
聞き手、イラストレーター。
水野しず(以下、しず):今日の撮影はいかがでしたか?
森香澄(以下、香澄):楽しかったです。普段は着ないような洋服を着させていただいたので。
しず:普段はどういう服を着るんですか?
香澄:わりとカジュアルが多いです。ジーンズとか!
しず:昔からそうなんですか?
香澄:昔はフリルがついていたり、可愛い系統が多くて。でも、そういう洋服をお仕事で着ることも多いので、プライベートはどんどんカジュアルになってきました。
しず:女の子っぽい洋服が好きだったんですね。
香澄:今も好きですよ。大学時代は花柄が流行っていて、よく着てました。でも、卒業してまず会社員になったので、そのころはオフィスカジュアルな服を着てたし、フリーになってからはよりカジュアルになっていった感じです。
しず:森さんって「わかりやすさ」のあるものに憧れているところと反抗しているところが両立しているように見えます。
香澄:そうかもしれないです。流行は好きなので、ファッションを真似したりとかはするんですけど、でも大衆に紛れたくないみたいな気持ちはやっぱりあるというか(笑)。
しず:王道の流行とはズラして取り入れている感じでしょうか。
香澄:ふふふ(笑)。そうですね、自分の中のこだわりを作っているかもしれないです。意味を持たせたい、みたいなのはありますね。
しず:ちゃんと社会性もあるんだけど、でもキャッチーさへの反骨心も持っているところが森さんっぽさですよね。
香澄:流行に乗ったそのままのファッションはあまり好きじゃないかもしれません。ベージュが流行ったときは、あえてビビッドな色が入った洋服を選んだり、全身ブラックコーデをしてみたり。個性だけで戦う強さはないし、世の中に迎合していたい気持ちもあるけど、その中で個性を出したい欲張りなところもあるっていう。
しず:自分のことをかなり客観的に見ていますよね。
香澄:ふふふ(笑)。アナウンサーって一歩引いて俯瞰する仕事なので、そういうクセがついちゃってるのかもしれないですね。
しず:自分のことも常に俯瞰するクセがあるんでしょうか?
香澄:そうですね。どうやって見られているかは常に考えています。
しず:フリーのアナウンサーとして独立をするきっかけはあったんですか?
香澄:会社員時代は、辞めたらできることが増えるなっていう気持ちがあった一方、会社に守られているからこその安心感もありました。そうやって過ごす中で、やってみたいことがどんどん増えてきて、それらを天秤にかけたときに「人生一度きりだからもっといろいろなことに挑戦してみようかな」と思ったんです。そしてどうせなら、早いほうがいいかなって。
しず:フリーになっていちばんやりたかったことって?
香澄:お芝居ですね。まったくやったことのないジャンルで、興味がありました。
しず:積極的に感情を表現するという意味ではアナウンサーのお仕事と真逆ですよね。
香澄:アナウンサーの仕事ももちろん楽しかったです。確かに感情はしまっておくことが多いけど、その場の見えない関係性を頭の中で整理して、どういうふうに進めたら円滑に進むかっていうのを計算して、番組の尺とかも考えて……。ロジカルに番組に携わったことは楽しかったんですけど、お芝居のような感情を大切にすることもお仕事としてやりたいと思うようになっていって。
しず:演技をするときは何か切り替えたりします?
香澄:いただいた役に対して、この人はこのときどういう感情なのかなっていうのはまず自分で考えるけど、どちらかというと監督と一緒に作っていくイメージでやってます。事前に自分で動き方まで作っちゃうと、AIみたいになってしまうので。
しず:余白を作った状態でその場に臨むんですね。
香澄:そうですね。アナウンサーのときは、自分の中で完璧にして持っていくけど、お芝居は自分の中で完璧にしているというよりは、みんなで作り上げるイメージがあるので、わりと人に頼ってます。
しず:逆に邪魔になっちゃうから?
香澄:はい。馴染まなくなってしまうので。
しず:完全な状態にも心地よさがあると思うし、不完全な状態にもそれはそれで心地よさがあると思うんですけど、どっちのほうがしっくりきますか?
香澄:私、ひとつのことをみんなで作るのが好きなんですよ。バラエティもそれに近いものがあると思うんですけど。ひとりで完結するのって、あまり面白くないなって。自分の中でその先がないというか。もっと広がる世界にいきたいなっていう思いがあります。
しず:話を聞いて気になったんですけど、アナウンサーの「完璧」って具体的にはどんな状態ですか?
香澄:尺どおりに収めるとか、情報をミスなく的確に伝えるとか、まんべんなく話を聞くとか、制作の意図を汲み取って円滑に進めるとか。それらが最低限で、当たり前にミスは許されない。そこにプラスして、どういう質問をするかとか、どういう順番に聞いて面白くするかとか、興味を持ってもらうようにどういう話し方をすればわかりやすくなるか、みたいなところも求められます。
しず:やるべきことが多い仕事ですね。
香澄:だから俯瞰的な視点が必要なんですよ。
しず:でも、完璧でありながら創造性も発揮していかなきゃいけないのってなんだか矛盾しているようにも感じるし、難しそう。
香澄:難しいですね。高いレベルでアナウンサーとか解説者を続けられている方は、本当に多才だと思います。
しず:それも楽しそうですけど、未知なことを追求したい気持ちが上回ったんですか?
香澄:そうですね。学生のときから学生キャスターみたいなことをやらせていただいて、その後、テレビ局のアナウンサーを丸4年やっている中で、とてもいろいろな経験ができたので。まだやれることももちろんあったかもしれないですが、違うことをやってみたいっていう気持ちが強かったです。私はスポーツの仕事が多かったんですけど、オリンピックもワールドカップも経験させていただいて……当時は忙しすぎてバタバタでした(笑)。だけど、とにかくやるしかないみたいな感じで。
しず:スポーツは学生時代から興味があった?
香澄:野球もサッカーも競馬もぜんぜん知らなかったです。だから、ルールから勉強しました。最初は何を言っているのかまったくわからなかったです。外国語を勉強するような感じでしたね。でも、例えば競馬なら、取材した馬が勝ったりすると感情移入しちゃうし、シンプルにうれしいって思うようになっていって。
Artwork&Interview_Shizu Mizuno