Interview / 2024.10.21
作り手がニットを愛する理由。5人のクリエイターに聞く、編み物への愛や奥深さ
それぞれが何かのきっかけで出合った編み物。その奥深さに触れ、仕事にしていたり、趣味として楽しんでいる5人の女性に取材。私生活の一部となっている編み物への愛を語る。
トレンドに左右されず自分達のときめきを大切に編み物を
pinkkipinkki
美容師:東峰 愛
主婦:東峰真由
東峰 愛(以下・愛)「幼いころから手芸や編み物が好きだった私達姉妹。妹の真由が作っているものが可愛くて、pinkkipinkkiを立ち上げることにしました」
東峰真由(以下・真由)「祖母がお裁縫や編み物が得意だったので、子どものころから編み物は本当に身近な存在でした。私は幼い息子がいるので編み物に充てられる時間は限られているけれど、編み物をしている時間はすごくリフレッシュになります」
愛「私は合間にやるというよりも一日集中してやるタイプ。それぞれ主婦、美容師として生活する中に編み物があるので、ブランドのために編むというよりは自分達が楽しんで編み物をして、ときめくような可愛いものを作るということをモットーに活動しています」
真由「毛糸はかぎ編みや棒編みなど、編み方の違いで作り上がったものの表情や質感が全く違って、そのバリエーションも豊富だから楽しい」
愛「ハンドニットは既製品とは違う魅力があると思います。ほどよいゆるさにあたたかみを感じますし、想いを込めて編まれたものだということを想像するだけで愛着が湧きます」
編み物は手紙を書く感覚に近く自分の思いをすべて込められるもの
hiruneknit
ニットクリエイター:ひるね
「写真家を目指していた大学4年生のときに休学をしてデンマークに留学をしました。地域のセカンドハンドのお店に並んでいた現地の方が編んで着なくなった手編みのアイテムを自分にお土産として購入。そのころからきっと私は編み物に魅了されていたんだと思います。コロナで留学を中断することになり、帰国してから写真を撮ることもできず、人と会えない状況の中で人肌が恋しいと思っていたときにデンマークで出合った手編みのニットがすごくあたたかかったな、と思い出しました。そこから写真で表現するのではなく、編み物で表現することを始めようと思いhiruneknitを立ち上げることに。人と対面で話すときに気持ちを100%伝えるのは難しいけれど、編み物は手紙のように編み直しをすることができる。時間はかかるけれど、そこにはいろいろな思いや丁寧さが込められていて、編み物は人に真心を伝えられる手段のひとつだなと思っています」
着る人があたたかな気持ちになるそんなニットアイテムを目指して
amuamu
陶芸家・ニットデザイナー:関口佳那
「私自身、仕事が辛くて病んでしまったときに何気なく始めたのが編み物でした。編み物をしている時間だけは日頃のストレスや仕事のことを考えずにいられたのが大きな救いでした。作ったアイテムをインスタグラムにアップしていたら、欲しいと言ってくださるフォロワーさんがたくさんいらして、実際に自分が手を動かして編んだものをその当時は販売していました。その後、本業である陶芸のほうで独立することになり、自分の手を動かしてものを作ることが難しくなってしまったので今はデザインや毛糸の仕入れ、ブランドプロデュースなどを私が担当し、11人のニッターさんとともに活動しています。amuamuのニットはウールやモヘアを60~100%使用することを絶対条件にしているのでお客様からもすごくあたたかいと定評です。あとはすべてセカンドハンドの毛糸を使っているのもこだわり。毛糸そのものが可愛いので形がちょっといびつでも愛くるしいのがニットの素敵なところだと思います」
自分の直感で気軽に0→1で思い描くアイテムを作れるのが楽しい
アパレルディレクター:hina
「おばあちゃんが編み物をする人だったので、4歳くらいのときに棒編みでコースターを作ったのが初めてだったような気がします。そこからずっと変わらず、何かを作り続けています。学生時代はタティングレースというレース編みの手法でアクセサリーを作り、ブランドとして販売していました。今は完全に趣味ですがいつかまたニットにまつわるブランドを立ち上げられたらいいなと思っています。映画を観たり音楽を聴くことは、ほかのことが同時にできますが編み物は両手がふさがってしまうため、それだけに集中して黙々と作業をする。スマホを見ることなく気がつくと時間が過ぎていて自然とデジタルデトックスの効果があるのも魅力。私自身ずっと編み物を続けているのはゼロから好きなものを作ることができるのも大きな理由ですが、平面の編み図から立体的なものを作るということが意外とロジカルで謎解きをしている感じがして面白いからだと思います」
Text & Edit_Arisu Onodera