Interview / 2022.07.11
貧困? 危険? 実際にアフリカに行ってみたら| 私たちのためのSDGs入門vol.4
bis LEADERSの世良マリカちゃんと一緒にSDGs(エスディージーズ)を学ぶ連載「私たちのためのSDGs入門」。Vol.4では、渋谷の商業施設「MIYASHITA PARK」に店舗を構える「CLOUDY(クラウディ)」の銅冶(ドウヤ)社長にインタビュー! アフリカで事業を始めるにあたり、経験したことや衝撃を受けたこととは? ブランドについてもたっぷりと語ってもらいました!
CLOUDYってどんなブランド?
アフリカンテイストのカラフルな柄が特徴的な「CLOUDY」。シンプルなコーデにエッセンスをプラスしてくれるバッグや、デイリーに使えるアパレルが揃う、今注目のブランドなのです。立ち上げたのは、外資系証券会社出身という経歴を持つ銅冶社長。大学の卒業旅行でアフリカに行って以来、アフリカについて深く興味を持ったそう。
――柄や色使いが本当に素敵ですが、商品はアフリカで作っているんですか?
「僕たちの工場は、アフリカのガーナにあって、600人くらいのワーカーさんたちがこのCLOUDYの商品を作ってくれています。どれもテキスタイルがすごく特徴的でしょ。ガーナ人のテキスタイルデザイナーが現地に数人いて、日々この鮮やかなデザインを起こして提案してくれているんです」
――どれも日常的に取り入れやすくてコーデしやすそうですね。
「洋服やバッグなどプロダクト自体のデザインは、日本のデザイナーにお願いしているので、普段使いができてトレンドを押さえたものが多いんだと思います。少し前までは僕が自分でやってたんですけど、今とは格段に差が(笑)もう、恥ずかしくなりますよ! アパレルから小物までのラインナップで、ガーナで実際に作っている商品が全体の55%くらい。あとの45%は現地の素材やテキスタイルを使ったものを販売しています」
――100%現地で生産しないのはなぜですか?
「やろうと思えばできるんですが、僕たちはブランディングを大事にしていて。アフリカ支援とかの話の前に、可愛いな、素敵だなって思っていただけることがブランドの宿命だと思っているんです。なので、しっかり市場マーケティングやトレンドリサーチをして、ミッションを達成していれば、100%現地生産である必要はないと思っています」
――NPO法人に寄付もされているんですよね?
「CLOUDYの経営の他に、アフリカの子どもたちへの教育支援や雇用支援を行うNPO法人も立ち上げていて、お買い物をしていただくと、そこに売り上げの10%が寄付される仕組みになっています」
「ただ漠然と寄付したって思ってもらうだけではもったいないので、CLOUDYのネームタグには仕掛けを作りました。タグの絵や言葉を見れば、なんのアクションに使われるのかがわかるようになっています。今回の春夏のテーマは“PARK”。日本とは違って、ガーナの公園は全て有料で、一般市民が自由に使える施設ではないんです。なので、今回はガーナに無料の公園を作るために、寄付した10%が使われるようにしました。使うたびに、そのアクションを思い出してもらえるとうれしいです」
アフリカに初めて行ったのは大学4年生のとき
まだ学生だったころ、初めてケニアに行って、物の考え方や見方、人生が大きく変わったと話す銅冶社長。大学でアフリカ研究会に入っているマリカちゃんは、そこでのお話に興味津々です。
――初めてアフリカに行ったとき、どう感じましたか?
「衝撃on衝撃でしたね。そのとき、スラム街に行ってみたんですが、服も着ていない靴も履いていない子どもたちがたくさんいるんです。物乞いをする人も多いし、日本では考えられないような光景を目の当たりにして、当たり前だと思っていたものがないことに、ものすごく格差を感じました。そのスラムには、200〜300万人くらいが住んでいるんですが、200戸にひとつくらいしかトイレがなくて。だから、そこら中に人の排泄物があって、臭いも凄まじかったです。そして、そこで、僕が思ったのは、「可哀想だな、何かしてあげたいな」だったんです。今となってはそう感じたことを反省しています」
――私もアフリカに行きたいのですが、観光地だけを回っても本質的なところは見えてこないですよね。でもどうして反省する気持ちになったのですか?
「格差を感じたのは、自分の物差しを押し付けていたからなんですよね。“これが幸せでこれが幸せじゃない”というのは、そもそも僕が勝手に判断して決めることではないんですよね。自分と比較するのではなく、その人にはその人なりの物差しがあるってことを、理解しておく必要があると思います。スラム街に足を踏み入れて、彼らの物差しを尊重した上で、現地の人たちのコミュニティーに入っていければ、本当の情報が得られるんじゃないかな。『アフリカ支援』は、多くの企業や団体がやっていて、とてもいいことではある反面、一方的な物差しでやっていることも多い。結果的に続かなかったり、現地の人からは、むしろ迷惑だったりすることも多いんですよね」
――そうしたコミュニティーに入って行く中で、危険な目に遭ったり、怖い思いをしたりはしなかったんですか?
「もちろんたくさんありましたよ! 銃口を向けられたこともあったし、賄賂を要求されたことも。たくさんの経験を経て、今の僕がいて、CLOUDYがあるんです! これはアフリカに限ったことではないと思いますが、新しい場所で何かを始めるときのキーポイントは、どの人が信頼できて、そこのボスが誰なのかをまずは見極めることですかね……(笑)」
現地に雇用を生むために始めたCLOUDY
初めて行ったケニアには、当時「教育」が圧倒的に足りなかったそう。そこで学校を作りたくて動き始めたが、教育だけではなく、「雇用」も生み出すことが大切だと気づいと話します。その考えに辿り着いた経緯はなんだったんでしょう。
「最初は教育に特化して、ケニアで学校建設プロジェクトを進めていたんですが、僕たちが作った学校を卒業した女の子の仕事がなかなか見つからない。結果、自分の体を犠牲にすることでしかお金を得ることができない子もいて。それに対しては否定も肯定もないんですが、圧倒的なジェンダー格差があるのは間違いない。女性が働ける環境が極端にないってことが、そうせざるを得なかった大きな原因。それを考えると、教育も大事だけど、生きていくためのお金を作ること、雇用を生むことが何よりも大事だという考えにたどり着きました」
――雇用を生むためにアフリカ進出を進める企業も多いと思いますが、どうお考えですか?
「どうしてもビジネスのやり方や内容を、自分たちの方法で押し付けていることが多いように感じます。ただ雇用を生めばいいわけではなくて、現地に根付いて永続的にしっかりとした雇用を生むことが大事だと思います。そこで僕たちは、彼らの素晴らしい文化に着目しました。家の軒先で、カラフルな織物や染め物や縫製作業をしている女性たち。この文化を尊重しながら最大限利用して、アパレル業界に挑めば、現地に工場も作れるし、雇用を生むことができる。そう確信したのが、CLOUDYのはじまりです」
――継続的に支援をすることの難しさを痛感しました。一方的な支援をしても意味がないし、アフリカに行ったとしても私に何ができるんだろう。まずは、観光地だけじゃなく、アフリカで暮らす人たちの日常を見に行きたいですね。ますますアフリカへの興味は深まるばかりです!
次回は、ガーナの学校についてのお話を中心にお届け♡ お楽しみに!
CLOUDY
https://cloudy-tokyo.com/
NPO法人Doooooooo
http://npo-doooooooo.org
<Profile>
世良マリカ(せらまりか) 2002年11月16日生まれ 神奈川県出身
世界三大ミスコン「ミス・ワールド2019ジャパン」にて、史上最年少16歳、現役高校生で「ミス・ワールド2019日本代表」に選出。2021年4月より慶應義塾大学に在学中。プラチナムプロダクションのSDGs推進プロジェクト「SO GOOD!!シブヤ部」のメンバーとして参加。
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Photo_Osamu Takeishi Text&Edit_Ryuko Hanada