bis

bis

Column

Column / 2020.03.04

スタイリスト・小藪奈央さんにインタビュー♡ ヴィンテージの虜になったきっかけ

可愛くてドリーミーで憧れる。そんな世界をつくり続けるクリエイターに今までのこと、これからのことをインタビュー。今回お話を伺ったのは、15年間にわたり、ロンドンでスタイリスト、コーディネーターとして活躍し、現在も雑誌や広告のほかアーティストのスタイリングを手がけ、多方面で活躍する小藪奈央さん。チャーミングで多幸感溢れる女性の夢や喜びを表現する彼女に迫りました。
 

Interview

大学生時代に友人と訪れたロンドンでヴィンテージの虜になり、帰りのチケットを買ったものの、そのまま3カ月の短期留学、数年後にはロンドンへ移り住んでいたという、スタイリストのNaoさん。そこから15年間、異国の地でスタイリスト、コーディネーターとして活躍し、見る人を惹きつけるガーリーでロマンティックな作品を数多く世に送り出してきました。かつてはロンドンで、現在はL.A.を拠点に活動するシンガーソングライター・Petite Meller(ペティート・メラー)のスタイリングのほとんどは、Naoさんが手がけるもの。2年半前に日本へ帰国し、身近な雑誌や広告でも彼女の作品に触れる機会が増え、ますます女の子達をキラキラした気持ちで包んでいます。そんな彼女のベースにあるのは、“ヴィンテージ”。Naoさんが思うその魅力、そして彼女をつくってきたものとは。
 

子どものころ習っていたバレエの発表会。
 
「数々見てきた中でも、ロンドンのヴィンテージに惹かれたのは、ジャンルや年代がさまざまで面白かったから。特にナイトドレスが好きです。ランジェリーの一種なんですけどシルクだけじゃなく、ヴィクトリアンならコットンもあるので、スタイリングにはもちろん普段もよく着ていて。ドレスだけど派手じゃない、ガーリーだけど大人っぽい、絶妙なバランスなんです。そしてヴィンテージの服は“人と被らないし、飽きない”。それが、いちばんの魅力ですね。私、人と同じが嫌いだったんですよ。みんながサッカーが好きなら私は野球と言ってみたり、ルーズソックスをはくならハイソックスをはいて。制服は指定のブラウスを着ずに、私服を合わせて。それにシャボン玉を首からぶら下げていましたから。人と同じ格好をしなくちゃいけないことに抵抗したかったんだと思います。大学生になり、それを満たしてくれたのが、地元の古着屋さんで出合ったヴィンテージのお洋服でした」
 
大学卒業後、日本で就職はせずにロンドンに渡ったNaoさん。ヴィンテージ熱が加速し、週末にさまざまなマーケットをまわるうち、素晴らしいクリエイター達とつながっていきます。
 

パリで訪れたヴィンテージマーケット。
 
「友人のおかげでファッション&カルチャーマガジン『Dazed & Confused(デイズド&コンフューズド)』でインターンをする機会に恵まれたり、ロンドンで活躍するスタイリストのアシスタントをさせてもらえたり。そこで知り合ったカメラマンの子達と自由に撮影して、世界のいろんな雑誌に作品を送って載せてもらえたり。最初は趣味の延長だったかもしれませんが、それがスタイリストとしての始まりだったと思います。海外では、すべてが編集者起点なわけでなく、フォトグラファーやスタイリストがストーリーを提案して始まることもたくさんあって。ペティートと作品をつくるときは、二人でアイデアを出し合い、意見が合わずぶつかり合うこともありますが、そこから生まれる作品が好きです。古い映画も教えてもらったし、哲学や思想についても新たに知ることがたくさんありました。MVの撮影で一緒にいろいろな国を旅して知らない世界を知ることができたのも大きいです。別の機会にそこから発想を得ることも多かったですね。日本には海外にないルールもあるので最初は戸惑うこともありましたが、私のスタイリングやアイデアを尊重してくださることも多く楽しんでやらせてもらっています。2〜3カ月に一度は、ペティートのスタイリングや自分の店の買い付けで、ロンドンやロスへは定期的に行きますから、今も表現の場は海外にも持っていますね」
 

パリで見つけたお気に入りのヴィンテージチューブトップ。
 
“自分の店”とは、2年半前にNaoさんがスタートさせたヴィンテージショップ「curios(キュリオズ)」。商売という感覚よりも、自分の好きなものに共感してくれる人達に訪れてほしいとの思いからつくったお店です。ロンドンにいたころに一時帰国して友人のオフィスに立ち寄った際、たまたま出合った中目黒の物件(現在は、原宿に移転)を即決したそう。
 
「いつかお店をやりたいと思っていたんです。でも、直感というか、何も考えずに決めました。築70年以上、エレベーターのないビルの5階フロア、普通だったらやめておこうって思う物件だけど」
 

ロンドン、パリ、L.A.など各地からバイイングした洋服が並ぶ。
 
“そのときは何も考えていなかった”。Naoさんはインタビュー中、何度もこの言葉を口にしました。でも聞けば、身を委ね浮遊しているようで、実は軸がぶれることがなく心が動くものだけを選択してきたことがうかがえます。「将来のことも正直何も決めていません。“今”でいいんですよね」人生の帳尻合わせをしないNaoさんの生き方は、とてもしなやかでかっこいい。

curiosをともに手がけるミック・ホイルのシューズブランド「F-TROUPE」が勢揃い。
 
 

NAO KOYABU

小藪奈央・15年にわたり、ロンドンでスタイリスト、コーディネーターとして活躍し、2年半前に帰国。現在東京を拠点に雑誌や広告のほか、アーティストのスタイリングを手がける。ヴィンテージショップ「curios」のオーナーでありバイヤー。
 
 
Interview_Sonoko Fujii