Column / 2018.02.05
縷縷夢兎デザイナー東佳苗監督が『My Doll Filter』を語る
ハンドニットブランド縷縷夢兎(るるむう)のデザイナーで、アートディレクターの東佳苗さんが映画監督としての才能を発揮したのが、2015年に発表した短編映画『Heavy Shabby Girl』。
その続編であり、特別編ともいえる短編映画『My Doll Filter』がbis webで公開中。
ここではその一部を東さんの言葉とともに紹介します。
あらゆるものが比較できるようになって、
“女の業”がうずまいてる。
Message from Kanae Higashi
今作の中心人物は、SNSとの関わり方はごく普通の女の子「りえ」と、SNSにとらわれているモデル「椿姫」、そして、SNS映えを気にしていない女の子「望」。
物語は、りえが憧れる椿姫と街中でぶつかり、りえが後をつけていったことから始まる。作品のテーマは、“女の業”そして、鍵となるのが“SNS”。
このふたつを取り入れた経緯を、東佳苗さんに語っていただいた。
“かわいい”よりも“選ばれたい”
「ここ数年でSNSが一般的になって、“いいね”が多いとか少ないとか、あらゆるものを比較できるようになってきました。
“いいね”を多く獲得するために、かわいいお菓子を買って写真を撮ったら捨てる、とか、そういったことが社会問題にもなってきていますよね。そこに、“女の業”みたいなものが、うずまいているような気がしていたんです。
私にはSNSにまつわる行為が正しい、正しくない、という判断はできないですが、何も考えないのは違うのではないかという思いがあり、“業”や“SNS”をテーマにした作品を創ろうと思いました。
私が手掛けている縷縷夢兎というブランドについても、“業”というふうに表現されることがよくあるんですよ。
アーティストやモデルへの衣装提供が中心なので、“選ばれた人にしか着られない服”というイメージがあるからではないかと思うんです。
『縷縷夢兎を着るまで死ねない』という言葉も目にすることがあるのですが、それは別にかわいいとかそういうことよりも、“縷縷夢兎に選ばれたい”ということなんではないかと。それが“業”というふうに表現されている。
そして、その“選ばれたい”という感情は、なにも縷縷夢兎においてだけではなく、女の子の日常の中には普通にあると思ったことも、今回のテーマにたどり着いたきっかけでもありました。
作中では、生活している環境やSNSへの関わり方が全く違う三人の女の子、りえ、椿姫、望が登場します。
この三人は普通に生きていたらほとんど交わることはないはずですが、もしもクロスしてしまったとき、それぞれがどんな行動に出て、どんな感情を抱くのか。そんなところに“女の業”を感じていただければと思います。
登場人物の感情面が美術的にも表されるような空間の演出にもこだわりました。
女の子たちの意識の変化とともに、衣装や背景にも注目してみてください」
『My Doll Filter』
キャスト:多屋来夢/金子理江/黒宮れい/弓ライカ/ひみこ/古山憲正
監督・衣装・美術:東 佳苗(縷縷夢兎)
製作・脚本:酒井拓哉(サカタク屋)
ヘアメイク:榎戸悠乃(MONDO-Artist)
写真:飯田エリカ
映像編集:橋本悠平
bis webで公開中
▶︎こちら
監督:東 佳苗(ひがし かなえ)
縷縷夢兎(るるむう)デザイナー、アートディレクター。1989年福岡県生まれ。文化服装学院ニットデザイン科卒業。
でんぱ組.inc、大森靖子、LADYBABY、北出菜奈などの衣装デザイン、MV監督など活動は多岐にわたる。
短編映画『Heavy Shabby Girl』(2015)、『THE END OF ANTHEM』(2017)の2作では監督を務め、新たな表現の場として映画製作に挑戦中。
「Heavy Shabby Girl」(2015)
「シブカル祭。2015」にて企画・製作された東佳苗さんの初監督作品。
貧しいけれど夢のある女の子と、お金や美しさはあるのに心には虚無感を抱える女の子。正反対の二人がケータイの画面(SNS)を通じてわずかな接触を持っていく。
モデルの黒宮れいや、多屋来夢、芸人の鳥肌実、俳優の木口健太らが出演。
©東 佳苗・サカタク屋