Column / 2018.04.05
追悼と記憶の場所、アウシュヴィッツにて。
ポーランド、クラクフひとり旅。
今回の旅の目的の一つは「アウシュヴィッツ強制収容所」でした。
「アウシュヴィッツ強制収容所」
目を背けたくなるような史実は、知識として知ってはいましたが、自分が本当にその場所に行くというイメージは、情報を調べていても、チケットを買っても、
なんなら現地に向かうバスに乗っても、なかなか湧きませんでした。
私が一番、どうしようもない思いに駆られたのは、壁一面に書き連ねられた、アウシュヴィッツに強制収容された人たちの名前です。
もちろん、ここの書かれていない人も本当にたくさん。
そこにあるのは、ただの情報ではなく、人ひとりの人生で。
好きなことや、やりたいことに山ほどあって、信じるものがあり、誰かを愛したり、何かに笑ったり、絶望したり。自分と何一つ変わらない人たち。
文字一つ、言葉一つひとつの重みがそんな情景と重なりました。
土地は土地で、建物は建物で、なんなら工場跡地と言われたら通り過ぎてしまうような場所です。多分、日本語のパンフレットやガイドツアーに参加しない限り、なんのことだかピンとこないまま終わってしまう人もいるかもしれません。
何を見ても、読んでも、知っても、感じても、それは自分本位のことでしかないと思います。そもそも、この場所を訪れたからといって何にもならないかもしれません。
だからこそ、私にできることは何か、そう考えたときに、
この記事で「この場所、そこで思ったこと」を発信することなのではないかと気づきました。
もちろん、描くことも。
私はこの場所で排他的思考の恐ろしさとグロテスクさについて、考えます。
収容者が処刑される場所が見える窓には、木の目隠しがされていました。それは、他の人がその処刑を見なくてすむようにするためのものらしいです。
どうして、そういう配慮ができる人がこんなことをするんだろうって本当に怖いと思いました。たった73年前の出来事なのに、フィクションみたいに真実味がない。
旅の目的はたくさんあると思います。私にとって、今回の行き先は「なぜかわからないけれど、いかなければならないと思う場所」でした。
これからも、そういう場所ができたら、どんなところでも臆する事なく足を運びたいと思います。そんな場所がまだまだあると思うと、少しも休んでいられません。
自己紹介
20歳の美大生、睡です。( ミスiD2018大森靖子賞受賞 )
四月まで、3カ月間チェコのアトリエでインターンをしています。プラハ近郊と周辺国のリアルを、長期滞在ならではのゆる〜い感覚と感性でお届けします。